「IT会議」を通じて行う福祉教育の試み
はじめに
この研究では予備調査を行った。「小学生に、親や親戚、学校や塾の先生以外に、対話をすることができる大人が何人いますか」との質問を行い、20人、10人との回答はなく、数人が数名、0人という回答が9割以上を占める。障害者の大人の知り合いは近所にいますか、との回答も0人である。本格的には今後の調査をすすめていくが、こうした背景には、誘拐などの事故予防から、知らない大人とは口を利かないようにとの幼稚園、保育園、小学校の指導にも因るであろう。それにもまして、現代日本における地域の人間関係の希薄化の現象は、都市部だけではなく郡部にも及んできている、という予備調査結果がでている。
こうしたことから、教師以外の大人との接触の機会づくり、また、通常ではなかなか接することができない人々(諸外国在住の人々や障害者や弁護士や大工など多様な職場の人々)との出会い、また、上記のように危険防止や小学生の訪問による迷惑回避のためにも、IT(インターネットテクノロジー)を用いた学習、しかも、それを福祉教育に用いることについてわれわれは学習会をもった。
具体的な方法として、小学校教員と大学教員の協力により実現した「インターネット・IT会議」を通して、リアルタイムで子ども達がバリアフリーの学習として「福祉」について教育する機会を設けることができたので、「小学校における福祉教育」の方法のひとつとして紹介する。
1、「IT会議」とは
1、小学生と障害者と大学教員をインターネットで結び、対話ができる環境を「IT会議」とここでは呼んでいる。
2、「IT会議」は特殊で高価なものではなくても、通常のパソコンを用いて実践することができ、それぞれの環境に居ながらにして、発言が可能であり、意見交換も可能である。
ただし、通信の速度の違いにより若干、動画の表示に違いがでる。
3、この環境を利用して小学生が行うことができる学習は、「福祉・環境・国際理解・地域(地場産業等)」他分野にわたり応用できる。
2、「IT会議を用いた「福祉教育」」とは
「IT会議」は、バーチャルカレッジの参加校が同時に情報通信を行うことである。
そして、いわゆるバーチャルカレッジ形式とは、ここでは、学年や年齢に制約されることのない学習の場をインターネットの仕組みを用いてすすめる形式を定義している。その内容は世界の「学習の場足りえるもの」のあらゆる活動との交流ができる可能性を秘めている。
今回は、このバーチャルカレッジを平成9年から構想してきた尾場均氏と福祉教育研究所との共同により、「IT会議」を用いて福祉教育を実践する方法について勉強会を重ねた。
その内容は、これまで対話の機会もまったくなかった、小学生と障害者、小学生と大学教員が、場所を違えたところで、同時に、画面を通して顔を見合わせながら「社会福祉や福祉のこと」について対話する。小学生にも理解しやすい本格的な福祉教育が実現できないかという試みが、実現したことを受けて、「福祉教育の方法」の視点と重ねて勉強会を行った。
3、「佐世保バーチャルカレッジ」と名付けられたこの試みが実現したことについて
平成12年12月4日、長崎県佐世保市の「春日、赤崎、早岐、港」の各小学校四校と、佐世保市ふれあいセンター、デジタルコンテンツセンターと、長崎国際大学を結び、小学生、障害者の方、大学教員ら総勢220人が参加して行った。ネット上に開設した画面モニターでお互いの顔を見合わせて会話し、さらに会議用の掲示板に各自が「福祉」に関連する質問や意見を書き込む方法も併用して、小学生の質問などに障害者の方や大学教員がそれに応答する方法ですすめた。資料1
4、子ども達に「生きた福祉教育にかなり近いもの」
5、福祉教育において「IT会議」を利用する
「福祉教育」に関連した、バーチャルカレッジは、今後も共同研究をすすめていくなかで、大切な点は、小学生の学習レディネス、そして、参加される障害者の方々の「教育としての参加の意識づくり」、大学教員の「小学生にも理解できるようなやさしい言葉で福祉を説明する力」などが大切であると思われた。
福祉教育は、学校におけるもの、生涯学習として対社会人としてのもの、に分けられるが、そのどちらにおいても、この「IT会議」は活用できる。福祉教育は、現場を知ること(特に実習)が重要であるが、現場を知る以前の事前学習(準備期)として、「仮想体験」として接する障害やその他の福祉問題に教育的配慮をもって福祉と教育を合致させるべく望むことは、学童期からの福祉学習としても有効であることが、アンケート結果などからも、「障害者の方がなにに困っておられるのか実際に話がきけてよかった」など、福祉教育に対するモチベーション(動機づけ)ができたことが伺える。
福祉教育研究所における勉強会においても、メディアやインターネットの技術についてと、福祉教育をどう繋ぎあわせれば、子ども達の教育効果があがるのかが焦点となっている。
6、おわりに
バーチャルカレッジ自体は、環境や国際理解など多くの企画をもってすすめられている。そのなかの一つに「福祉分野」があり、そのなかの福祉教育の部分で、共通する対象を互いに発見できたのが、 今回の研究のはじまりであった。共同研究はまだ始まったばかりであるが、福祉教育からみたバーチャルカレッジの活用という視点、ここから私たちは勉強をすすめていきたいと考えている。そのためにも、小学校、民間の福祉関係者、大学、行政、教育庁等が「IT」通して(福祉教育)をすすめるという協力関係が必要である。そしてそれは現在、(福祉)に限らず(IT)をとおして広く教育的、経済的な効果が模索されている。今回は福祉教育に生かすための資料として子ども達のアンケートの声をそのまま添付している。そうした声のなかから、「IT会議」を用いた福祉教育の方法について、調査結果等を生かして、今後の福祉教科研究を深め取り組んでいきたい。
ネットワークを活用した共同学習プログラム
総合的な学習 「福祉」
テーマ:バリアフリー
1.目 的
佐世保バーチャルカレッジでは、佐世保市近隣の小学校数校との共同で、この総合的な学習の進め方及びその成果の発表・活用についてインターネットを利用した研修を重ねてきた。その活動の一環として、ネットワークを利用した共同学習を企画し各学校のテーマに共通して掲げられている「福祉」について、12月4日の日程で、インターネット会議を開催した。4つの小学校の生徒と長崎国際大学の先生方、それに障害者の支援団体であるピアさせぼの協力で、当事者にも参加していただき、バリアフリーをテーマとして意見交換や質疑応答の形で学習を進めた。
2.日時
平成12年12月4日 月曜日 3時限目と4時限目 10:40〜12:20
3.参加校・団体
佐世保市立赤崎小学校・早岐小学校・春日小学校・港小学校
長崎国際大学 人間社会学部 社会福祉学科 教員(専門的なアドバイス)
国際観光学科 教員(会議システム・技術担当)
大学生(各小学校へのタイピングと操作の援助)
ピアさせぼ(当事者の意見)
佐世保デジタルコンテンツセンター(ネットワーク技術担当)
4.会議環境
各小学校パソコン室 端末約20台。液晶プロジェクタにて会議内容をスクリーン表示
テレビ会議システムを使用し、リアルタイムに発言者の表情と音声を同時に伝える。
長崎国際大学 大学内ネットワーク
ピアさせぼ 佐世保市ふれあいセンター内 インターネット公開端末
協 同組合佐世保デジタルコンテンツセンター 掲示板用サーバー
5.会議の進め方
会議当日(12/4)以前10日間程度、インターネットを活用し、バリアフリーについての調べ作業を行い、掲示板に意見・質問等を書き込む。
アドバイザーも随時掲示板を使用し、意見や回答を行う。
12月4日(当日) 最初の1時限目は、事前に調べた内容について、各小学校で話し合いを行う。
2時限目に入ると、ネットを使って意見交換を行う。
1.司会(長崎国際大学 教員)より開会及び最初の問題提起
(例:生徒たちが知っているバリアフリーは何?) 2.各校のパソコン室で意見発表 同時にネットワーク上の掲示板に意見を入力 3.入力された意見や質問に対する自由討議及び回答・アドバイス(全参加者) 4.次の問題抽出提起(司会(長崎国際大学 教員)) 5.自由討議(全参加者) 6.まとめ 6.イメージ図
今回のバーチャルカレッジを体験した佐世保市内A小学校3年生の感想アンケート
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